ゆうびん

CHARGE(チャージ)症候群という先天的な疾病を抱えて生まれた裕(ゆう)と過ごす風景を書き連ねます。

診断

さあ、退院してからの話を書こうと思っていましたが、今の話を少々。

ゆうの症状について、診断名がほぼ固まりました。

「CHARGE(チャージ)症候群」と言います。

いわゆる病名、というよりは、一連の症状の合わさったもの、現象、とでも言った方がいいのかもしれません。
遺伝子の変異により発症する多発奇形症候群です。
成長・発達の遅れのほか、生命維持に不可欠な循環器、呼吸器の臓器障害と、視覚・聴覚の障害によってコミュニケーションや学習が難しくなるなど、合併重複する障害をもつことが多いとされています。

「CHARGE」は、この症候群に特徴的な主症状の頭文字から命名されました。

  C:網膜の部分欠損(コロボーマ)

  H:心奇形

  A:後鼻孔閉鎖

  R:成長障害・発達遅滞

  G:外陰部低形成

  E:耳奇形・難聴

原因は長らく明らかではありませんでしたが、2004年、CHD7という遺伝子の変異により発症することが判明しました。
頻度は2万人に1人程度、日本では5000人程度、患者がいるとも言われています。
遺伝子解析技術の進展により原因がわかった症候群ですので、これまで確定診断を受けてこなかった人(原因不明の多発奇形などと診断される)も多くいるのではと予想され、実際の患者数はもっと多いのかもしれません。
それぞれの症状が必ず出る、というわけではなく、症状の軽重も個人差が大きいですが、着実にその子なりに成長していくようです。

CHARGE症候群の理解と将来に向けて | 厚生労働省 難治性疾患克服研究事業 「CHARGE症候群の成人期の病像の解明と遺伝子診断の臨床応用・iPS細胞の確立」

この診断に至るまで、長い道のりでした。
今年5月、先天的な重度難聴が判明したことが、この診断名へと結びつくきっかけとなりました。
6月に、遺伝科の医師の診察を受けたところ、
これまでの病歴や体の様子、動かし方などから、CHARGE症候群の疑い、とみたてられ、遺伝子検査を受けることになりました。
そしてこのほど、原因遺伝子に変異があることが判明したので、厳密には確定とは言えないけど、まあCHARGE症候群でしょう、との診断をいただきました。

診断名がつくことで、ゆうの症状や病気が、すぐに改善へつながる、というわけではありません。
けれども、診断を得ることで、同じ症候群の子どもたちが、どのように成長しているのか、どんな療育、治療を受けてきたのか、といったことがわかります。
7月には、CHARGE症候群と診断された患児・者と家族による
「CHARGEの会」(http://charge.2.pro.tok2.com/の集いに参加し、先輩のみなさんや医師や歯科医、教師など患児の治療や療育、教育に関わるさまざまな方から、多くのアドバイスとエネルギーをもらいました。

そうして得られたものを道標にすることで、まっくらだったと道のりに、少し灯りをともすことができました。
同じ症候群の子どもを持つご家族と出会い、尋ねて話を伺う、そうしたやりとりを通じて、さらに進むべき道を探りあてやすくなる感じがしています。

昨年の退院に至るまで、ゆうが心臓や生殖器に異常があるのはなぜなのか、医師に尋ねる機会が何度かありました。
その時の答えは、体のいろんなところに奇形が出るということは、確率的にみれば、それぞれが単発の病気、というよりも、その奇形を生じさせた原因がある、(つまり遺伝子レベル、人の発生メカニズムにおける異常)と考える方が自然。
けれど、今、その原因を突き詰めて探っても、すぐにゆうくんの病気の治療に効果をもたらすものではない、追い追い考えていけばいいのでは、と。

その時は、なるほどそうだ、今は心臓の病気の治療に専念して、回復させればいいのだ、と考えていました。
今の時点から振り返って考えると、やや視野が狭くなってしまったかなあ、とは感じます。
診断という手がかりによって、身体の内と外の状態ばかりでなく、五感や知的な発達への目配りがもっとできたのかもしれないなあ、と。
特に、耳がほとんど聞こえないことがわかるまで、1年2カ月かかった、ということは、いつも傍にいた私たちにとって、衝撃的な出来事でした。

で、実は退院してはじめて、住みかの近くの大学病院の小児科を受診したのが、昨年5月1日。難聴が判明したのが、1年後の5月1日。
なんとも言えない因果めいたものを感じてしまいます。これから、この1年を振り返り思い出しつつ、今と過去とを行き来しながら、書き連ねていきます。