ゆうびん

CHARGE(チャージ)症候群という先天的な疾病を抱えて生まれた裕(ゆう)と過ごす風景を書き連ねます。

太陽をみる

相変わらず、いろんな経験をしてみよう、との思いで、動きまわる日々です。
よく出かける三鷹市国立天文台があり、そこでは星だけでなく太陽もみられるそうで、今回はそこに出かけてきました。

www.nao.ac.jp

肉眼では見られない太陽を、映し出す望遠鏡をのぞきました。

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直接、筒をのぞくのではなく、下に置かれた紙に太陽の姿が映し出されます。
この建物は、1921年に建てられ、望遠鏡は1927年に作られたものだそうで、ほぼ1世紀、太陽を観察してきたものだそう。
床に敷き詰められた板の油の匂いが、なんとも懐かしい感じ。

白い紙の上には、太陽の黒点も映し出されています。ほこりかと思えるような点でしたが、雲がかかれば消えてしまうので、やはり太陽の姿が現れているようです。

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ゆうは、自分の手をかざして、影絵遊びに夢中の様子。

同じ敷地には、三鷹市星と森と絵本の家もありました。

www.city.mitaka.tokyo.jp

星を観察するために守られたうっそうとした森が、独特な雰囲気を醸しています。

こちらでゆうが太陽の絵本を選び、妻が太陽になりきり、全身パフォーマンスで読み聞かせをしていました。


ゆうは来週から夏休み。

我が家のカレンダーはすでにびっしりです。

ガソリンをちょうだい

先日、ゆうがニタニタしながらやってきて、「ガソリンをちょうだい」と言いました。
「なあに?」と聞くと、同じように「ガソリンをちょうだい」と言います。
はて?と思いめぐらしていると、ひとつ心当たりを見つけました。

我が家に来客があった際、妻が「ビールは私のガソリンなの」と笑いながら手話で言っていました。
どうやらこのやりとりを、ゆうが見ていた様子。
妻の冗談交じりの表現を真似て、「飲み物を欲しい」と言っていることがわかりました。
子どもは真似をすると言いますが、知らぬ間にゆうもいろんな表現を真似ているんですね。
我が家でシャレが利かないのは私だけ、ついにゆうにも先を越されてしまいました。

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家族全員に年齢を尋ね、ごきげんなゆう。

はじめの一歩は10m

今週保育所で、ゆうが数歩歩いたと言われました。
手をつないでなら、長い距離を歩けるものの、これまでは怖がって、なかなか手を離そうとはしませんでした。

さっそくその日の夜、妻はゆうを壁に立たせ、少し離れた場所から歩いてみてと促したそうです。
ゆうはニタニタしながら、しっかりした足取りで数歩歩いたそう。
もっと歩けるとふんだ妻は、玄関付近にゆうを立たせ、今度は一番遠い窓際から呼んだそうです。
ゆうは少し足を開き、はにかみながら妻に向かって歩きはじめました。
その距離はなんと10m。
足りないのは、勇気だけだったことがはっきりしました。

ゆうがハイハイを始めたのが、1歳8か月。
約1年半もの間、ハイハイで手足を鍛え、ようやくこの時を迎えました。

 

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ひとりで歩けなかったために、これまでできなかった体験がたくさんあります。

雨降りに傘をさすこと、虫を網でつかまえること、ジャングルジムにのぼること、ダンスを踊ること。

3歳の夏は、さらに忙しくなりそうです。

 

田植え

埼玉で田植えをしてきました。
まだ歩けないゆうを連れて大丈夫かな?と私は心配でしたが、「泥の中にズボっと突っ込めば、逆に安定してるはず」と妻の一言。

主催は環境に関する手話研究会、子どもを含む20人ほどで、1枚の田に手でひとつひとつ苗を植えました。稲以外のシーズンは、土壌に窒素を固定するれんげを植えていると手話で説明もありました。

まず、田の端と端に目印となるヒモを張り、間隔をあけて横一列に並びます。苗は2~3本ずつ、15センチ間隔に。

水着を着せられ、私と位置についたゆうも、最初は嫌がっていましたが、まさしく泥で身動き取れない状況。仕方ないと徐々に慣れ、楽しんでいました。

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役を仰せつかり、はりきるゆう。
ただ、さすがに思うように動けず、しんどくなったか途中で失礼しましたが。。。

お昼には採れたてのトマトやキュウリ、自家製ぬかづけや味噌もふるまわれ、あぜ道に座ってみんなで頂きました。まるでなつかしい絵本の中にいるようなひととき。

午後もみんなで田植えをしました。ただ、ゆうを誘っても「結構です」と手や首を横に振るばかりだったので、みんなを見守ったり、少しまた田植えをしたりと、あぜと田んぼを行き来しながら、始めて4時間ほどで終了。
さわやかな疲れとともに、爪の隙間にも泥が残ります。
秋にはまた稲刈りもすることができるそうで、今から楽しみです。貴重な経験をありがとうございました。

そして最後は我が家のお決まり。
「今日は楽しかった?」とゆうに尋ねると、「パパは?ママは?」と聞き返されます。

「田植え、楽しかった」と私たちが答えると、「ゆうも楽しかった!」と笑顔がこぼれました。

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すべては愛着から

時には、座学にも出かけます。
先日、聴覚以外にも特別な支援を必要とする、人工内耳をつけている子どもへの関わり方について、セミナーを受けてきました。

オーストラリアにある盲・聾児のための王立機関の専門家の先生方による講義でしたが、支援のテクニックや技法を細かくレクチャーするというよりは、子どもとの関わり方の基本的な姿勢を説くようなお話でした。

かいつまんで内容を紹介すれば、
*聴覚だけの支援では不十分
*子どもの愛着形成が一番大事(発達の基礎になる)
*個々のニーズ、状況を理解して導くこと
*子どもがコミュニケーションを広げるために、両親の関わりを必要とすること
といったことでしょうか。

最近のゆうを見ていて、本当によくしゃべるなあ、とつくづく感じます。
車のマークを手話で表現するのが、マイブームなんですが、先日「じいじの車はトヨタだったよね」と妻に話したそうです。

じいじの車を最後に見たのはお正月、トヨタの手話を覚えたのは先月。
これまでは、車のマークをどう表現するかわからなかったから、こちらに伝えなかっただけで、伝え方、つまり言葉がわかれば、それを使って表すことができるのだと気がつきました。

セミナーで先生も話していましたが、初めのうちは、子どもにどんなに話しかけても、何もリアクションがなく、そのことが親を苦しめます。
私たち家族も、手を変え品を変え、ゆうに話しかけたり、遊んだりしてみても、はじめは反応が薄くて、気持ちがつらかったことを覚えています。
先生は、それでも親は続けてほしい、と言います。
親は、頭ではわかっていても、気持ちとして、それを続けていくのは正直難しい。
その時こそ、専門家の出番です。
働きかけを続けることに、どんな意味があるか、先輩の事例を紹介しながら、アドバイスやサポートが重要となります。

子どもは、最初は表現の仕方もよくわからないから特に反応しないだけで、こちらの様子はちゃんと見て覚えているようです。
ある時、それまでため込んできたものがあふれ出るように、音声であれ手話であれ、表現の仕方を身につけ、盛んに伝えるようになるのかな、と感じます。

 

チャージ症候群の子どもは、視覚や聴覚をはじめ、多くの障害を重ねて抱える、いわゆる重複障害と言われます。だからこそ、単一の障害の子どもと同じように、またそれ以上に支援の機会が必要だと思います。

我が家は、3歳になるまでは、ろう学校の乳幼児クラスに通っていましたが、幼稚部には入ることができませんでした(歩けないという理由から)。
地域によっては、先輩方の運動によって、門戸が開かれているところもあるようですが、教育や療育、支援のありようについて考えさせられることが多いです。


セミナーでは、先生がネコの鳴き声を出し、ネコが鳴いたねーと手話を見せ、次に、口を隠してネコの鳴き声を聞かせると、ゆうははにかみながら「ネコだ」と手話をしてみせました。そして、少しですが、にゃあと鳴きマネも。

こうした座学も、先生の話をきっかけに気づきを得られることも多く、貴重な機会となりました。

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船を追いかけて飛ぶ、カモメやウミネコが気になってます。

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とげが動いているウニを、「なんで?」と言いながら見つめてます。

2度目のパントマイム

週末は、さまざまなイベントに顔を出す日々が続いていますが、先日、2度目の舞台を楽しんできました。

最初は、今年2月、下北沢での公演でした。

 

xh123.hatenablog.com

 

この劇団人形夜さんが、今度は北千住で舞台を開くと聞き、出かけてきました。

 

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初めて見たパントマイムとはまた違った印象を受ける舞台でした。
ホールやお客さんの雰囲気が変わると、舞台を包む空気も変わるのでしょうか。

ゆうは、開演前に、こちら

tabelog.com

で、ハンバーガーをたらふく食べたせいか、気持ちよくなって眠ってしまいました。。。

次に、パントマイムを観た時、どんな感想が湧き起こってくるか、楽しみです。

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劇団主宰のパーツ・イシバさんと。

 

東京の西側で動くことが多いのですが、こうしてたまに東側へ出かけてくると、街の雰囲気の違いを実感できます。
空劇場から眼下をみおろすと、川が入り組んでいるのが目につきます。
この土地が河口に近いことを実感できます。

というわけで、週末行脚はまだまだ続きます。

川遊び

ここのところ、毎週のように手話に関わるイベントに参加していますが、先日は「きこえない親子のBBQ」に出かけて、秋川渓谷でバーベキューを楽しみました。

バーベキューは、これまでのキャンプでゆうも経験していますが、川遊び自体は初めて。
最初は、川の水の冷たさに驚き、激しく手を横に振り、身をよじって抵抗していましたが、浅い岸辺に座って、水を掛け合ったり、河原の石を投げたり、掘り返しているうちにだんだん楽しくなってきた様子。

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大きな石を川の中に落とし、跳ね返る水に興奮していました。

バーベキューだったのに、お昼にできたての焼きおにぎりを食べただけで、ほとんどの時間を河原で過ごしてしまいました。
よほど楽しかったんでしょうね。

川では、大学生が高い岩から川面に飛び込んだり、騒々しくもありましたが、ゆうはその様子をじっと観察していました。

思いのほか、川を気に入っていたので、ぜひまた来てみたいです。

企画を主催してくださったみなさま、ありがとうございました!

 

ところで、最近のゆうは、車のマークに夢中。
以前から、街中で我が家と同じ車のマークを見かけるたびに「パパと一緒だね」とは言っていました。
近頃は、いろんな車の前に立ち、先頭のエンブレムを指差して、何?と聞いてきます。そこで妻は工夫した表現で答えて、車のマークを確かめるブームに火がつきました。

例えば、Volvoは手話ローマ字のvovo。
☆が数個描れたスバルは、散らばった☆。
〇が4つ重なったアウディは、両手で親指と人差し指で〇を作り4つ繫げる
といった感じです。

家庭の中だけで通じるサインであっても、ゆうが興味を持ったことを一緒に手話で会話し、楽しみたいと思っています。

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