ゆうびん

CHARGE(チャージ)症候群という先天的な疾病を抱えて生まれた裕(ゆう)と過ごす風景を書き連ねます。

音への気づき

ここのところ、音に気づいているのかな、と思える出来事が続きました。

我が家のマンションはオートロックなのですが、インターホンを押すとチャイムが鳴ります。その音が聞こえると、ゆうの動きや目線が一度止まります。あれ~なんか聴こえたような、とでも言いたげに、目を中空に泳がせるような表情になります。
また、ゆうと面と向かって座り、私の後ろで鈴を鳴らすと、んん~、と目がはっきり泳いで、何事かと考えているような表情に。

音がしたら、すぐ振り向く、というように、音への反応はわかりやすく出てくると思われがち(私もそう思っていました)ですが、まったく違うようです。

ほとんど音を聞いたことがないゆうにとって、音が聞こえる、ということ自体、普通ではない出来事。
なので、音が聞こえると、
 まず、これは何かなあ、
 あー、何か聴こえるなあ、
 さて、どこから聞こえるのかなあ、
というように、音そのものが何なのか、どこから聞こえるのか、ひとつひとつ考えながら、顔や体を動かしている様子。

傍から見ていると、これまでまるで音への反応がないように見えましたが、このインターホンへの反応をきっかけに、いろいろな音を出したり、声をかけたりして、ゆうの行動を注意深く観察してみると、どうやら音に気づいていると思えるようになりました。

ここ数カ月、人工内耳の装用後も、予想していたような反応も特になく、まずは手話から!と思って、取り組んできましたが、ここに来て、音への気づきが明らかになってきました。

私たち聴者は、声をかけられればその方向をすぐ判断でき、声の音質で男女を聞き分けるなど、聞こえた音からすぐさまその背景情報も獲得し、処理しています。
けれども、ゆうのような先天的な聾者は、音そのものが、未知であり、まったく新しい出来事なのです。いわば、聴覚の部分だけ生まれたての赤ちゃんのような状態とでも言えるでしょうか。

呼ばれたら振り向くとか、返事するとか、そういう動作、流れを見せて、学ばせていくことで、音が聞こえたらどう答えたらいいのか、ゆう自身が身につけていかねばなりません。私たちは、日常生活すべてを活かして、学びやすいように工夫していく必要があります。
今まで取り組んできた手話を活かしつつ、これからは音も使ってコミュニケーションできるように、さらに勉強を重ねていきます。

双方を並行して習得していかねばならず、どちらもきちんと使いこなせるようになるか不安がないとは言えませんが、たくさんの先輩方やいろんな専門家のお知恵をいただいて、みんなでなんとか切り開いていきたい、と思っています。

 

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【うさんくさいおっさんの手だけれど、それを離せば転んでしまうので必死です。手をつなげば、よろよろ歩けるようになりました。短い距離ですが。】