ゆうびん

CHARGE(チャージ)症候群という先天的な疾病を抱えて生まれた裕(ゆう)と過ごす風景を書き連ねます。

言葉と読書、思考の力を考える

「人工内耳と療育」をテーマにしたフォーラムに参加してきました。
ゆうが人工内耳埋め込み手術を受けた東京医科大学聴覚・人工内耳センターが、毎年テーマを決めて開催しているものだそうで、私は初めての参加でした。

東京医科大学病院 聴覚・人工内耳センター(聴こえと言葉のケア)


以前も書いたように、人工内耳の手術は終わった後が大事、親がしっかりしないとね、医師や言語聴覚士をはじめ、みなが口をそろえて言います。じゃあ、親はどうしたらいいんだろ、と考えてしまうのが率直なところです。
我が家の場合、ゆうは、ろう学校の乳幼児クラスと認可保育所の非定型保育に通っています。ただし、ろう学校は個人指導なので、他の子との交わりはほとんどなく、最近行き始めた明晴学園で、ろう者の先生やこどもたちと手話でコミュニケーションし、遊び始めました。
一方、認可保育所では、週に2~3回、朝から夕方まで、健常の子どもたちと一緒に過ごしています。こちらでも、身ぶり手ぶりでやりとりしている様子。

人工内耳を通じて、音が入ることに期待を持ちつつも、「言語」「言葉」を獲得する、という意味で、手話という言語を身につけることも、ゆうにとっては有効なように感じます。
というわけで、今のゆうは、手話をメインに言葉をやりとりし、音への反応も見ながら、取り組んでいます。ある意味、二股をかけている、ような状況です。心配なのは、虻蜂取らず、二兎追う者は・・・にならないか、という点。

今回のフォーラムを通じて、印象に残ったことがいくつかありました。
◯聴覚・口話と手話とは、ともすると対立しがち。どちらも両立するようなプログラムを考えられないか。

◯人工内耳をつける子どもは、普通学校、ろう学校、どちらにも通っている。ただ、前者では授業についていけるか、疎外感が高まらないようなサポートがあるか、後者では、社会で暮らすための技法が身につけられるか、といったことが心配されている。

◯早く人工内耳をつけたら発達が進む、とよく言われている。けれども、人工内耳をつけた子どもの語彙力や読書力の調査を分析すると、必ずしもそういう傾向は見られなかった。健常児と比べて難聴児全体は、力がやや低めと言える。

◯人工内耳をつける子どもは増えているのに、支援態勢は不十分。つけた子のその後の経過などがまったく把握できておらず、データベースすらないのは問題。国レベルでも支援態勢が必要。

◯言語を使いこなすためには、音韻やリズムなどの韻律情報を身につけることが重要。
(例えば、最初、ゾウを「ぞうさん」と覚えると、同じゾウを「ぞう」と呼んでも、同じものと理解できないことがある。「ぞうさん」という言葉が、「ぞう/さん」と「動物の名前/~さん」の2つの意味ある言葉でできていると理解していく。そして、書く力は「ぞ/う/さ/ん」と単位に分けられるかが大事。)

◯発達の状況を調べる方法も見直していくべき。例えば、語彙検査だけで、その子どもの発達状況を見極められるかどうか。語彙をたくさん覚えていても、その語彙にひもづく概念(ネットワーク)がどれだけ豊かかどうかが、思考する力を身につけるためには重要。
(「太った言葉」「やせた言葉」という表現で、ネットワークの豊かさを表現します。)

今の私にとっては、言葉を使いこなすのは、当たり前のことですが、どうやって身につけたかを考えていくと、ずいぶん奥の深い、人の根源をたどるような世界が広がってきます。

ゆうは、語彙数も300に迫り、1~10の数字も覚え始めてきて、着々と語彙力をつけてきています。
ただ、その語彙の力を文法力、読書力と合わせて、思考力を獲得していくためには、まだ多くのヤマがあるんだな。そんなことを考えさせられました。