ゆうびん

CHARGE(チャージ)症候群という先天的な疾病を抱えて生まれた裕(ゆう)と過ごす風景を書き連ねます。

年が明けました。

寒中お見舞い申し上げます。
お変わりなくお過ごしでしょうか。

新年早々、我が家はゆうの人工内耳の手術を迎え、無事、終わりました。
正直なところ、昨年末は仕事にかかりっきりで過ごし、あっという間に手術予定日を迎えた感じです。

手術前日に入院し、小児科の医師から体調のチェックを受けます。そして、耳鼻咽喉科や麻酔科のお医者さんの手術前の診察など、タイムテーブルにのって作業が続きます。

頭の手術であり、全身麻酔をかけるのですが、やはりそこにはある程度リスクがあります。
前回の心臓の手術は、それをしないと生死にかかわる状況だったので、麻酔についてはほとんど意識しませんでした。

けれども、今回の手術は、それ自体が直接生死に直結するものではありません。小さな子どもに、ましてやチャージ症候群を抱えるゆうに、全身麻酔をかけることのリスクを強く感じました。
事前の説明で、風邪などの感染症があると、麻酔中に呼吸が止まるといった重大な事態が起きやすくなるので、絶対に感染させないように気をつけて、と何度も釘を刺されました。年末年始の寒い季節に、厳しいことです。

合わせて、私たちも、患者の立場から、手術に向けた準備のお手伝いをしてきました。
主治医の先生からの依頼もあり、チャージ症候群の診断を受けた医師にお願いして、チャージ症候群の子どもへの手術、麻酔によるリスクなどについて文書をつくっていただきました。希少な「疾病」なので、チャージ症候群の子どもの特徴を、医師に十分に知ってもらうことが、なにより重要です。

そうして迎えた手術の当日。
ゆうは、持ち前の力強さを発揮して、ごきげんに手を振りながら、手術室へと向かって行きました。

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手術は、朝の9時から3時間ほどの予定。
ということで、院内のソファでひたすら帰りを待ち続けます。
待つのは慣れている身でも、やはり長く感じるこの時間。
12時を過ぎてもなんら変化はなく、13時もあっさり越える。
さすがに不安がのど元からこみあげてきます。
そして、13時半少し前くらいだったでしょうか。主治医の先生が、おおむね無事終わりました、と現れ、簡単に説明をして、去ってゆかれました。
ふう。
それからまた30分を過ぎたくらいに、麻酔から覚めたゆうが帰ってきました。
妻の顔を見て、泣き始めます。
ここで、ほっと一息。のど元のつかえが、スーっと、とれていきました。

看護師さんにゆうの体調を診てもらった後、病室でゆうとご対面。
手術をした左耳を押さえるため、頭にきつく包帯が巻かれています。
見るからに、不愉快な様子が顔の表情からも伝わってきました。顔の神経も大丈夫かな、そう感じられました。
人工内耳の手術では、機器を蝸牛に差し込むために、顔面神経を傷つけるリスクがある、と言われていました。
せっかく表情の豊かなゆうから、表情が失われてはたまったものではありません。
そのことも心配なことのひとつでした。

人工内耳の手術を受けるにあたって、親の立場で、いろいろ悩み、思いあぐねました。

人工内耳について:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会

子ども自身は、今、自分に人工内耳が必要かどうかを判断できません。
親が判断しなければなりません。
聾学校やチャージの会で、手話の世界の豊かな表現を感じ、中程度の難聴の子どもさんや、人工内耳を付けている子どもたちが、会話を交わしている姿を見てきました。
ゆうが将来、どんなふうにコミュニケーションをとっていけるのだろうか、などなど、今考えても結論が出るわけではないと思いつつも、考えました。
人工内耳を付ければ、どんな人でも音が聞こえるようになるわけではなく、個人差があります。手術をしてみなわからん、という世界。
結局、ぐるぐる思いはめぐるばかり。
でしたが、こうして手術を受けられる環境もまたご縁なんだろう、できるならやろう、早いうちに挑戦してみよう、と思いいたりました。

人工内耳手術は、手術がゴールではなく、そこがスタートです。
今、ゆうはサインや簡単な手話を覚え、私たちとコミュニケーションを交わしています。そうした方法に加えて、これから、ゆうの聞こえを探っていくプロセスが始まります。
どれかひとつに、とこだわらず、いろんな方法を使うことで、ゆうにふさわしいコミュニケーションのありようを探っていきたい。そう考えています。
耳が聞こえる私たちにとって、なかなか想像しにくい状況ですが、頭と心をフル回転させ、一緒に試行錯誤していきたいと思います。

今年のゆうは、他にも手術を控えています。
目の前のハードルを、わっせわっせと越える日々が続きますが、これまで以上に、いろんなところへ行き、モノを見て、聴いて、触って、たくさん経験させていこうと思っています。
引き続き、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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手術後の夕方、バカボンパパ風。

「これでいいのだ」